2017/02/13 11:57

書評コラムは、テーマごとに書評と合わせて複数の本を紹介していくスタイルですが、それとは別に、一冊の本について書評するコーナーをつくります。最初の回は「中国共産党 葬られた歴史」です。

 ご存知のとおり、中国共産党は、1921年7月に、上海で誕生したとされている。最初の頃は、陳独秀が書記となり、活動をしていたが、国民党による弾圧、南昌蜂起の失敗、端金、井崗山での活動、長征、延安での革命政府という流れの中でいつの間にか毛沢東が指導者になっていくわけである。

 実は中国共産党は、陳独秀が中心となっていた上海以外にも、北京、広東、湖北、湖南、日本、パリにあった組織が合体してできたものであり、もともと上海閥と広東閥が最大勢力であった。とくに南昌蜂起までは、広東閥が主導的な役割をはたしていたという話がかかれている。この本は、広東閥の中心的存在であった譚平山の息子、譚天度(著者の叔父)を中心に描かれているが、これでもかというぐらい共産主義、毛沢東のいやらしさ、陰険さが描かれている。

 つまり、毛沢東自身の権力強化のために、陳独秀を抹殺し、広東閥のメンバーの功績を過小評価し(毛沢東は湖南閥であり、長征のあたりから指導者になったので、それ以前の歴史が邪魔なわけである)、文化大革命で政敵を抹殺する中で、広東閥を弾圧し、唯一生き残ったのが著者の叔父である譚天度であるという話である。スターリンといい毛沢東といいポルポトといい、どうして共産主義にはこうしたテロルが付きものか考えさせられる本である。

 また、それ以外に、日本が太平洋戦争に負けたとき、広東閥とイギリスとの間で話をし、イギリスが当面香港を再統治してもかまわないから、共産党の活動を認めてくれ(この当時はまだ国共内戦が終わっていない)といったあたりなど歴史秘話が盛りだくさんで、中国通にとっても非常に面白い。それと当時に、歴史というものに対する共産党の態度というのがすすけて見える。読み応えのある一冊。(了)