2017/02/08 15:20

 前回のコラムが、ハンナ・アーレントでしたので、今回から数回に分けて、近代日本の政治思想家およびその関連書をいくつか取り上げていきたいと思います。

 まず、初めに、日本の近世、近代史について(江戸、明治、大正、昭和20年まで)ですが、戦後の東京裁判史観や、マルクス主義歴史観の影響が強く、ある意味不当に評価が低くされているのではという問題意識が私にはあります。例えば、近世、近代史では、「農民は虐げられていました」云々などのステレオタイプの表現が日本史の教科書では目立ちます。

 実際は、江戸時代においてはある程度罪刑法定主義が機能してました(厳密には、法の内容が町民、職人、農民に公開されていなかったとう点では機能していないといえなくもないが、内規にせよ、恣意的に罪や刑罰を科すことはなくなったという意味では機能しているという立場を私は取りたい)し、時代劇のように何でも拷問して自白させるというようなことはありませんでした。拷問についていえば、4種類(むち打ち、石抱き、エビ攻め、つるしぜめ)に限られてましたし、ある程度段階を踏んで適用されてました(いきなり、エビ攻め、つるしぜめ、されることは普通はない)。このあたりについては、日本法制史の著書で書かれていることだと思います。

 さて、明治以降昭和20年までの話ですが、大日本帝国憲法が公布され、日清、日露戦争に勝利した日本は、世界の大国入りをするわけです。そして大正デモクラシーとよばれる時代になると、立憲君主制なり、議会制民主主義がある程度機能するわけですが、世界恐慌にはじまるブロック経済の中で、日本も諸外国同様、深刻な不況に陥り、それを打破する思想として、共産主義、ファシズム、保守主義等、左翼、右翼など、さまざまな思想を唱える政治思想家が出てくるわけです。とくに大正、昭和にかけては、世界的にも、共産主義(左翼)VSファシズム(ナチズム、超国家主義、皇道派など、右翼?陣営)VS 自由経済主義(一部社民主義も入るか?) VS 統制経済主義(ケインズ、ニューディール、統制派など)と色々な思想が入り乱れています。このコラムでは、日本の思想家をいくつか取り上げます。

左翼と右翼の違いについては、「右翼と左翼の違いが判る本 PHP」が比較的詳しいです。また、どんな思想家がいたのかについては「憂国と革命の日本史 宝島社」「日本愛国者列伝 宝島社」がわりとわかりやすいです。日本のファシズムについては「未完のファシズム 新潮選書」をみるとよいと思います。

  

 

 それでは、最初の人物として、大川周明を取り上げたいと思います。かれは戦前の右翼思想家の中では、一、二を争うインテリで、博覧強記の人物といえます。彼のすごいところは、単なる政治だけでなく、アジア問題の他、国学、宗教等アカデミズムも含めて幅広いフィールドで活躍しているところです。今回は彼の著作のうち、「日本精神研究」「日本二千六百年史」を取り上げたいと思います。

  
詳細については次回のお楽しみに(続く)。